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2012年10月21日 (日)

シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする

10月18日(木)は、所英明が報告しました。

伊藤香織他監修・著。宣伝会議。2008年刊。
欧州の成功事例に学ぶ地域活性につながるまちづくりの指南書
 18世紀にイギリスで生まれた「シビックプライド(=市民が都市に対してもつ自負と愛着)」の考え方は、近年地域活性の切り札として脚光を浴びているそうです。
 都市が持続し、豊かになっていくためのコミュニケーションデザインについて、ヨーロッパの都市をケーススタディとして実際に現地を取材、分析している本です。
 都市それぞれに歴史があり、抱える問題もそれぞれです。したがって、問題解決へのアプローチも様々です。本書ではそれを、3×3のマトリックス表示にし、9つのマスに、9つの問題解決へのアプローチが示され、各都市ではそのどこに重点が置かれたか、マトリックスの中に大きさの違う丸印を置くデザインが採用されています。本としてのデザインもスマートです。
 個々の問題解決へのアプローチは、街中へのシンボリックなインフォセンターの建築であったり、特徴的なロゴによるシビックプライド醸成のためのキャッチフレーズとその徹底的な広報であったり、街の中心街のランドスケープの空間デザインによる刷新であったり、……と具体的に紹介され、またその仕掛け人たちへのインタビューなども適宜挿入されています。それぞれの例がなかなか魅力的で、わくわくします。悪い評判が立ってしまった都市を如何に再生させるか、など物語性も豊かな例が紹介されます。また、いずれの例でも、そこにシビックプライド——権利と責任を合わせ持つ市民のプライド——の醸成が、都市を活性化させるキイになる、という視点が示されます。
全体の3分の2までが、このような実際例であり、残り3分の1が、分析に当てられています。
【感想】
 まず、ヨーロッパを中心とした各都市の取り組みの具体例が魅力的。では、日本ではそのような例はないのか、など気になってくるのではないかと思います。
 一方、分析編の文章は、シビックプライドの考え方の紹介や、どのように醸成して行くのかという方法論などが論じられていますが、よく説得される、というところまでいかない感じが残ったように思います。むしろ説得力は前半の具体例やインタビューから来ていた。
 シビックプライドという視点が持つ難しさの一つは、プライドという意識の問題を扱うことから来ているのでしょう。意識を育てる、というときに決まった方法、間違いのない方法などないはずです。安易な取り組みは、プライドを醸成するどころか壊してしまうでしょう。
 いくつもの事例で見えてくるのは、活性化に成功した都市の事例はどれも、まずはプロジェクトを立ち上げた人たちその人たち自身が、都市の活性化をこころから願い、プライドを持つことから始まっている、ということなのかもしれません。おのおののプロジェクトの内容はさまざであり、始めは懐疑的であったり、相手にされなかったりもする、そのプロジェクトがその進行に伴い、少しずつ市民に定着し、市民を巻き込み、最終的に多くの市民を説得するのは、そのプロジェクトに込めた人々の願いの強さ、プライドによっている、ということなのかもしれない、と感じました。

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